折原一『灰色の仮面』(感想)

最近 日本も世界もあまりにろくな出来事がないから、ここのところ新聞やニュースにほとんど目を通してなかったんだけど、先日たまたま個人的にスーパーエポックメイキングなニュースを目にしてしまった。

 

 

マジか。相棒は中1(2011)の時に夕方の再放送からハマって、甲斐期の途中まで追っかけてた。相棒に出会った2011年当時、本放送では神戸時代のラストだったけど再放送は亀山時代のエピソードがほとんどだったから、やっぱり自分にとって杉下右京の相棒といえば真っ先に浮かぶのは亀山薫なんだなあ。

4代目の7年間がすっぽり抜け落ちてるけど、あの亀山薫が戻ってくるなら最初の3話くらいは見てみたいな。シーズンの開始は昔と変わらず10月とのこと。先の楽しみが増えそう。

 

さて、今日は読んだ本の感想を書きます。

 

叙述もので有名な折原一の『灰色の仮面』。だいぶ初期の作品。事実、いま講談社文庫から出てる折原作品(他社で再文庫化されてたり、後に改訂版が出たものは除く)の中では最も初版年が古いので、入手手段も限られるし、知名度もそんなに高くないと思われる。

 

あらすじを簡単に紹介

物書きの仕事でその日暮らしの生活をするヘタレ男が無駄な正義感から、たまたま目撃した助けを求める女の声に応じて女のいたマンションの部屋にやって来ると、女は死んでいた。その後 間髪入れずに死んだ女の同居人が帰ってきて男は犯人と間違われてしまい、さあ大変。男は何とか現場のマンションから逃走し、自宅のアパートに戻ってくることに成功。男は警察の目を盗みつつ自ら事件の真相究明に乗り出すも、それは同時に影に潜む真犯人との戦いの始まりでもあった…

 

まあざっとこんな感じになる。

ところで僕が思う折原作品の魅力は、氏が得意とする叙述トリックが生み出す「だまされる快感」以外にも、「単純に読み物として面白い」という点も当てはまる。

基本的に登場人物が探偵や警察ではなくただの素人なので、感情移入もしやすく、まったり読める。その一方で、素人のくせにやたらおっかない案件にばかり巻き込まれるので、スリリングな展開で読者を飽きさせない。

 

で、この作品だけど、まず主人公の男がヘタレの多い折原作品の登場人物の中でもトップクラスにヘタレ。まだ氏の作品を完全読破しているわけではないが、これまで読んだものの男主人公の中では断トツである。

ほかのヘタレはまだ感情移入によって応援したくなったりして、作品にいいアクセントを添えてくれるものの、こいつの行動は率直に言ってイラつくことが多かった。

 

サスペンスの読み物としての評価は、上でさんざんディスった主人公のヘタレ具合に目をつむれば及第点です。真犯人の魔の手から逃れつつ追っかけっこみたいな展開は折原作品の有名どころでは他にないんじゃないかな(『ロンド』は似てるけどちょっと違う)。

 

肝心のオチだけど、紹介文にある「最後の1行まで真犯人がわからない」っていう文言は嘘ではない。嘘ではないけど、他の名の知れた初期作品と比べるとラストのインパクトにはだいぶ欠ける。はっきり言って重版がかからないのも納得のできである。過度な期待はせず、氏の他作品とは一風違ったホラー要素がやや濃い目のサスペンス読み物と割り切って読むべきでしょう。

 

ミステリーの感想をネタバレなしで書くのは難しいけど、あったらあったでまた色々と迷走しそうな気はする。

折原さんの小説は今後も読んでいくと思います。まずは更新のペースを上げなくては。ではでは。